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単勝・複勝の期待値と回収率 — 計算式と実例
公開: 2026年4月 / 最終更新: 2026年5月
競馬の馬券を「楽しみとして買う」ことと、「数字として評価する」ことは別の作業です。 本記事は、もっとも構造が単純な 単勝 と 複勝を題材に、期待値・回収率・控除率の関係を式と例で整理します。 数式は出てきますが、四則演算の範囲のみです。
1. 期待値の定義
確率変数 X の期待値 E[X] は、 取りうる値 x_i をその発生確率 p_i で 重み付け平均した値です。
E[X] = Σ p_i × x_i
1 単位(たとえば 100 円)を賭けたときの期待値は、 「的中時の払戻額 − 賭金」と「外れ時の損失(= 賭金)」を、 それぞれの発生確率で平均したものです。
2. 単勝の期待値
単勝は「1 着になる馬を当てる」券種で、配当倍率(オッズ)を o、 自分の見立てる勝率を p とすると、1 単位賭けたときの収支期待値は次の式になります。
E = p × (o − 1) + (1 − p) × (−1) = p × o − p − 1 + p = p × o − 1
直観的には「勝率 × オッズ」が 1 を超えていれば、長期的にプラスの期待値があるということです。
例 1: フェアな馬券(控除なし)
仮にオッズが本当に確率の逆数(控除率 0%)であれば、勝率 25% の馬の単勝オッズは 4.0 倍です。 このとき期待値は 0.25 × 4.0 − 1 = 0。長期的には収支ゼロに収束します。
例 2: JRA の単勝
JRA の単勝の控除率は約 20% なので、勝率 25% の馬の市場オッズは 理論的に 4.0 × (1 − 0.20) = 3.2 倍前後に収まります。 このときの期待値は 0.25 × 3.2 − 1 = −0.20。 ランダムに買えば長期的に 20% 近くの損失です。
例 3: 自分の見立てが市場より正確だった場合
市場オッズは 3.2 倍だが、自分は「この馬の勝率は 35% だ」と 見ている場合の期待値は 0.35 × 3.2 − 1 = 0.12。 長期的には 12% のプラス回収率になります。 重要なのは、この計算は 「自分の勝率見立てが正しい前提」で 成立する、という点です。
3. 複勝の期待値
複勝は「3 着以内に入る馬を当てる」券種です(出走頭数が少ない場合は 2 着以内)。 単勝と違い、複勝のオッズは「下限〜上限」の範囲で表示され、 確定オッズは購入時の払戻動向に依存します。
仮に下限オッズ o_low、上限オッズ o_high、 自分の見立てる「3 着以内率」を q とした場合、 下限・上限それぞれで計算した期待値は次のようになります。
E_low = q × (o_low − 1) + (1 − q) × (−1) = q × o_low − 1 E_high = q × (o_high − 1) + (1 − q) × (−1) = q × o_high − 1
実際の払戻はこの 2 値の間に収まります。 複勝は的中率自体が高く(仮に出走 18 頭でランダム選択でも理論上 17%)、 単勝より分散が小さい代わりに、控除率も同じ約 20% が適用されます。
4. 回収率と期待値の関係
回収率は次の式で定義されます。
回収率 = 払戻金 ÷ 賭け金 × 100 (%)
長期的(試行回数が十分大きいとき)には、 1 試行あたりの期待値 E に対して回収率は次に収束します。
長期回収率 (%) = (1 + E) × 100
- E = 0.0 → 長期回収率 100%(プラスマイナスゼロ)
- E = −0.20 → 長期回収率 80%(控除率 20% に等しい構造的損失)
- E = +0.10 → 長期回収率 110%
ここでの「長期」は、現実的には数百〜数千試行のオーダーです。 数十試行では分散の影響が支配的で、期待値どおりの収束は観測できません。
5. 控除率の構造的な重み
券種ごとの控除率は、運営側があらかじめ取り分として確保している割合です。 以下は 2024 年時点の代表的な値(払戻率の裏返し)。
| 券種 | 控除率(概ね) | 長期回収率の上限 |
|---|---|---|
| 単勝・複勝 | 約 20% | 80% |
| 馬連・ワイド | 約 22.5% | 77.5% |
| 馬単・3 連複 | 約 25% | 75% |
| 3 連単・WIN5 | 約 27.5% | 72.5% |
控除率を上回る期待値を出すには、市場オッズが反映している 「集合的な勝率予測」よりも自分の予測が系統的に正確である必要があります。 特定のレースで一時的に的中するのではなく、長期的に控除率を超え続ける、 というのは現実には極めて困難です。
6. よくある誤解
「前回当てたから次もいける」
独立試行において過去の結果は次の試行の確率に影響しません (ギャンブラーズ・ファラシー)。連勝・連敗を「流れ」として 確率の見立てに反映するのは、数学的根拠のない調整です。
「期待値プラスの買い目だけ買えば必ず勝てる」
理論上の長期回収率はプラスでも、短期分散は大きく、 数十回程度の試行では普通にマイナス収支で終わる期間があります。 資金管理(ケリー基準などの応用)と十分な試行回数が前提です。
「平均オッズが高ければ期待値も高い」
期待値は 勝率 × オッズ の関係で決まります。 オッズが高くても勝率がそれ以上に低ければ、期待値はマイナスです。 高オッズ馬を狙う戦略は、勝率の見立てが市場より高い場合に限り意味を持ちます。
7. ツールでの活用
実際のレース直前で、複数頭の見立て勝率と現在オッズを並べて期待値を出すのは、 手計算や表計算ソフトだとレース時間に間に合わないことがあります。 本サイトの Keiba Calculator は、この計算を素早く行うための補助ツールとして公開しています。
関連リンク
注: 本記事は確率・期待値の数学的整理であり、特定の買い方を推奨するものではありません。 馬券の購入は娯楽の範囲で、自身の判断と責任のもと行ってください。